許容もなく慈悲もなく

Keita Ito/イワシミズの文章です

1年間で100冊読んだレポ

年始にこんな目標を立てた。

「とりあえずの指標」とか年始早々保身に走ったことを言っているが、100冊読むという目標を立てた。気持ちとしては本気だった。何より、宣言することで自分を律したかったのだ。

 

100冊読む上で、己にルールを設けた。簡単な小説ばかり読めばすぐに達成できてしまうし、それで「今年100冊読んだっす笑」とか言っても格好悪いからだ。

①自分が興味のあるジャンルかつ、新しい知識が得られること(再読はなし)

②読んだ後に300字程度の感想を書くこと

というルールにした。

故に、ライトすぎるものや、逆に難しすぎて諦めたものは省いている。そして、日常的に読むことになるので、感想を書いておかないと読んだこと自体を忘れてしまう。(これはマジであって、「ヨルガオ殺人事件下」を読んだことを忘れて2回読んでしまった。)

 

そして現在である。なんとか読み切ることができた…!

100冊という冊数は、多読としては大したことない量ではあるものの、フルタイム労働×保育園のお迎え、日々の家事などを抱える人間にとっては、余暇の時間をかなり充てる必要があった。得られた知見も多くあるので、共有しておきたい。

 

・Audibleは必須だった

Audibleとは、Amazonが提供しているオーディオブックのサービスである。

自分の場合は、洗濯や洗い物、通勤などの耳と脳だけが空いている隙間時間も勘定に入れないと全然無理だった。Audibleがなかったらかなり厳しかったと思う。複利もあり、Audibleで読んでいるとなぜか「紙の方の読書も捗る」という相乗効果が起こるのでめちゃめちゃブーストした月もあった。

これが俺なりのブースト。

 

ちなみにだが虚無感が訪れて一冊も読んでない月もある。

 

積読が消滅した

読書習慣が強化され、興味の赴くままに手にとって読んでいるうちについに、積読が消滅した。これは人生初の快挙である。驚きと喜び、そして寂しさという複雑な感情に包まれたが、積読がないのは落ち着かず、また積まねばという使命感に駆られている。ちなみに、積読を読んでみた感想としては、どれも「そら積むわ」という感じでした。

 

・点と点の知識が繋がる瞬間が気持ちいい

魔女狩り西洋史」で、魔女狩りが特に盛んに行われた地域についての記述があった。国、地域によって魔女狩りの規模は大きく異なる。魔女狩りは山岳地帯であったり、土地や政治の権利関係が複雑で、行政の一円支配の及びにくい地域で特に激しさを増す。特に、アルザスとロレーヌ地方ではフランス王と神聖ローマ帝国のどちらを領主とするかが複雑に揺れうごいた背景もあり、地元君主が魔女狩りを取り仕切ることで、自分の権威を示すために利用したという側面も生まれた。このような記述を見ても、以前の自分なら「へえ、そうなんだ」とスルーしていただけだろう。

しかし!今年の俺は違うのだ。理解ってしまうのだ。

以前読んだ書籍を通じて、「アルザス・ロレーヌ地方」が、ドイツと国境を接する冷涼な山岳地帯だということを知っている。そして、同地方がのちに普仏戦争後にフランスからドイツに割譲され、さらに第一次世界大戦後に再びフランス領となったという歴史を知っている。という風に、点と点の知識が繋がり、線となる瞬間、そして、次の一冊がよりわかりやすくなるという複利効果が生まれるのがとても気持ちいいのだ。

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・「全然好きじゃない作者」が発生した

漫画と違って一話完結でないものが多いから、書籍は「試し読み」の難易度が高い。本を買う時って基本ハズレに当たりたくないから、どこか臆病になって、話題の単著だけ買うみたいなところがあると思うんだけど、今年の俺は勇敢で、とにかく読んだ。気に入った作品があれば、同じ著者の本を全部読むみたいなことをしていく中で、この作品は良かったけど、全体的にこの人が好きというわけではないな、みたいな、好感度が変なポジションの作家が出てきた。当たり前だが、試行回数が増えるので、ハズレを引く確率も上がるというだけなんだと思うが、自分の中で初めての体験だったので面白かった。

 

・逆に、好きな作品との出会いも増えた

当たり前のことしか言っていないが、試行回数が増えるとアタリに出会う可能性も上がる。今までより母数が多いので、今年はおすすめの作品をたくさん言える。これは嬉しい。ここからは、今年読んだ中でよかった作品を何作か紹介したい。あくまで「俺が今年読んだ」というだけなので、今更?みたいなやつもあるのはご容赦ください。

 

■フィクション編

・禍/小田雅久仁

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禍々しい作品が好きだ。俺が読むのはホラーとかミステリ、SFばかりで、特に「人間がめちゃくちゃになる作品」が好き。精神的か肉体的かは問わないが、めちゃくちゃになってほしい。でも、後味が悪いのは嫌で、徹底的にドライで、読後はカラッとしていてほしい。そんな偏屈人間となってしまった自分を救うのは、こういった不条理SF短編集なのだ。まさしく前述の、めちゃくちゃになる人間たちの物語ではあるが、下品なグロテスク描写はなく、上質な不気味さと言える。短編集だが、通底するテーマがあり、目、耳、鼻、口など、体の一部に起こる「禍」という意味ではどこか繋がっているように思う。中でも『耳もぐり』が一番のお気に入り。導入、世界の設定からオチまで最高で、俺は今でも時々こういう形か?と自分の手で「耳もぐり」の形を探ろうとするほどである。

 

・寝煙草の危険/マリアーナ・エンリケ

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アルゼンチンの短編ホラー小説。スペイン語圏作家の中でも評価が高い作者らしく、2009年発表の作品ながら、日本語訳されたのは比較的最近のようだ。描写のグロテスクさ、不気味さから、作品全体に薄暗い霧のような雰囲気が異国感を感じさせてくれた。『ショッピングカート』の、「道端で下痢便をする老人を追い払ったら集落ごと滅びるような不運が押し寄せた」みたいな話とか、日本の作家ならまず採用しないような展開をはじめとして、南米らしい治安の悪さが新鮮に感じ、日本のホラーとまるで違う嫌さがあるところが魅力。

 

・お前の彼女は二階で茹で死に/白井智之

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この本だけはおすすめとかではない。俺が好きなだけである。

読んだことがある人からしたら、「これが年間ベストに入るの人としておかしいだろ」と思うかも知れない。自分でも常軌を逸していると思う。でも、初めの数ページの時点で惚れてしまったのだ。一応、探偵物なんだが、まず、登場する全ての名詞がイカれている。全ての展開がひどすぎる。あまりにも不条理かつナンセンスで、倫理観の消滅した世界でノンストップに起こる殺人事件。一切の説明もなく、「自殺した妹の復讐を果たすため、天才女子高生を監禁している警察官」が主人公だということがわかると、そこで倫理観が完全に終わっていることが判明しそこに痺れる。カスみたいな内容の、最低な事件を真面目に推理する場面(トリックもカスすぎる)があまりにも滑稽すぎて、シニカルな笑いを誘う上、万事がそんな感じなのでもはや爽やかさすらある。最後までブレーキなしで突っ走って、そのまま崖から落ちていくような小説だった。いっそもう、気持ちが良かった。

 

■ノンフィクション編

ノンフィクションは、これまで以上にたくさん読んだ。

比率としては小説4割ノンフィクション6割くらい。

 

・奇跡のフォント―教科書が読めない子どもを知って UDデジタル教科書体開発物語/高田裕美

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教員をしている。仕事でワードを開いてプリントを作る。そんな時にいつの間にかあって、なんとなく「子どもが見やすそうだな」と思って選ぶことの多かった「UDデジタル教科書体」。自分にとっても馴染み深いこのフォントの開発までの道のりと、リリースまでの紆余曲折を描いたエッセイ。この、「UDデジタル教科書体」は、他のフォントの開発とは決定的に違うところがある。一文字一文字が、ディスクレシアや、弱視を持つ子どものために作られ、検証されている。開発途中の困難について詳しく描かれるが、細部に宿るそのこだわりは、利用者の一人である俺が「なんとなくいいな」と思い、同じようにたくさんの人が採用することに繋がっているのだ。身近な「なんとなくいい」ものの背景がわかったことが一番の学びとなった。

 

・ワインの授業フランス編/杉山明日香

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著者が河合塾の数学講師であることもあって、まるで対面で展開される授業のようで、とてつもなくわかりやすかった。フランスワイン初学者にとっては、これほど有難い一冊もないように思う。ワインの基礎知識から、A.O.Cについて、フランスワインの概論を語る1章。そして、シャンパーニュブルゴーニュボルドーという三つの地方を中心に据え、ドメーヌとシャトーの特色の違いや、各地のワイン作りや食文化について2から7章で展開している。何より、ワインの楽しさである、「知ることで、より味わいが深まる」ということを表現している一冊だと感じた。そして、シリーズである「イタリア編」も併せて読むとより理解が深まるので、ワインについて基礎的に知りたい人には是非です。「シュール・リー」とか完全にこれで知った。

 

・ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣/ジェームズ・クリアー

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ナレッジ系で今年最も多くの学びを得たのは、この本からである。

あまりに良すぎて何周もしてしまったので、ぜひ皆さんも読んでみてください。

長文のnoteを書くほどに、ベネ・・・

note.com

他にもいっぱいあるからもっと紹介したいが、この辺にしておく。

 

最後に

・でも、本読んでても何にもならない

身も蓋も無さすぎる。正確には、「読んでるだけ」では何にもならない。漫画の代わりみたいに読んでいても消費してしまうだけで、対して身入りのない時間となる。「読むとは何か」みたいな哲学的な世界へと入り込みそうになってようやく、アウトプットの大切さが身に染みてわかる。記録することで、考えの整理と自分自身の学びを深めることに繋がる。そのため、春頃からいいなと思ったセンテンスを記憶に残すために書くようにしている。そして、可能なら「手書きメモ」に残している。その方が記憶への定着が良い。

・恐れずに学べるようになったような気がする

多読のおかげで、「調べて学習する」ことへの心理的ハードルがかなり下がった。俺って何でも読めるから、やる気さえあれば何でも習得できるのでは、という希望が生まれている。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でも述べられていたが、「次に読む本を見つけること」って、忙しい中ではなかなか難しい。今年の自分は、興味の矛先が次に読む本へと自然と接続できていて、それが学びに繋がっていった。

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この一年の読書で得られたものはたくさんある。しかし、自分の興味だけでは世界は広がらない。ワインの知識やタコスについて、インデックス投資半導体業界や第一次世界大戦についてなど、流石に節操なさすぎるし、あまりにも無軌道すぎた。他にも、いつ使えるんだ、みたいな知識も多く仕入れ、売り上げる機会がなく在庫を腐らせている気がする。インプットをやりすぎた。次の一年はもっと、発信する年にしていきたいと思う。

耳の時代が来る

もう、すぐそこまで来てる。

 

俺たちは忙しい。本当に忙しくなった。

人生における諸問題や日々の雑事に追われ、未来への展望などそっちのけで、時には目の前のそれをこなしていくだけで精一杯だ。

仕事のちょっとした空き時間。通勤や車の運転、食器洗いや掃除、子どもの寝かしつけ等…脳と耳だけが唯一空いている、といった状態が昔より多くなり、これまでよりも、耳から情報を得ることが増えた。

なので今日は、皆さんにも耳の時代が到来していることをお知らせするべく、俺がよく聴いているポッドキャストや、ラジオコンテンツを紹介しようと思う。

 

■匿名ラジオ

www.youtube.com

オモコロのARuFaとダ・ヴィンチ・恐山のラジオ。

嘘みたいにずっと聴いている。2019年の初頭からだから、もう5年も聴いている。

他にやることなかったのかってくらい聴いていて(ほとんど全部を2回ずつくらい聴いている)(好きな回は多分5・6回ずつ聴いている)、もし知ってる人がいたら一緒に話したい。もしそんな人に会えたら多分嬉しさのあまり匿ラリスナーにしかわからないことだけを永遠に言い続ける機械となるでしょう。最近は星野源もゲストに来ていたので、もう皆さんご存知ですよね。もしまだなら特にオススメの回を紹介するので今から聴いてください。

#32「ラストバトルでOPテーマが流れる演出は最高」 - YouTube

#90「ねえ!!イオンに泊まれるとしたら何をしたい!?!?」- YouTube

#121「しょうもない議題でマジ討論!『リンゴとバナナ、どっちが優れたフルーツなの!?』」- YouTube

#140「自分たちで『お祭り』を作って語り継がれた~~~い!!」- YouTube

#152「絶対に他の作品と『かぶってないであろう特殊能力』を考えてみよう!」- YouTube

#181「年末だし『どのお菓子が一番強いのか』を決めよう!!」- YouTube

#229「自分達が老人になったら孫の世代に昔のことを話したい!」- YouTube

#264「人気になるために『匿名ラジオ』のキャッチコピーを考えよう!」- YouTube

#302「親の都合で『ホグワーツ』に転校することになったらどうする!?」- YouTube

#328ARuFa激務により欠席!今のうちに同僚と『CMに出る方法』を考えよう!」- YouTube

#419「幼少期に持ってた謎のプライドを大発表!ガキのプライド2024!」- YouTube

 

聴き初めはアニオタトークや、古のインターネットの話をたくさんしてくれるので、自分の波長と合うなと感じていたのだが、徐々に二人の関係性からくる掛け合いや、突飛なアイデアに惹かれて気づけばどんどん聞き進めてしまっていた。

サービス精神が旺盛すぎてもはやラジオじゃないだろってくらいのギミックが用意されている回もあって、ゲスト(永田さん)にも揶揄されていたがもうほぼ「音によるオモロ」になっている。本当に大好きなコンテンツ。豊洲PITでの配信も最高でした。

 

■経営中毒〜誰にも言えない社長の孤独〜

ビジネス・経済分野を中心に、様々なPodcastを展開する音声コンテンツレーベル『Chronicle』が手がける番組。株式会社エッグフォワード代表の徳谷さんと、Chronicleの野村さんの二人がパーソナリティで、徳谷さんの実体験や、多くの企業を見てきた経験から、「トップの孤独」を軸に、会社にまつわる諸問題をトークテーマに発信していく。序盤からめちゃめちゃ飛ばしていて、社長業、会社経営ならではのリアルな辛さが語られてくるので、1クール目から心を掴まれた。

Chronicleのコンテンツは、野村さんがMCを務めている番組しか聞けていないが、なんといっても野村さんの声が良い。基本インタビュアー・聞き役だが、説明をまとめたり、質問という形で、より深い内容を掘り下げたりする中で、彼の相槌を聞くことが多いのだが、その一つをとっても知識に対する誠実さが伝わってくるように思う。

そして徳谷さんは、発言内容によっては問題になりかねないような、センシティブな話題に対しても、バランスよく、かといってありきたりでない的確なアドバイスを瞬時にくれるところに「即断即決・即言語化」といった爽快感があって良い。

この二人の会話は、お互いが論理的な思考を基本のブロックとして持ちながら、どんどんと積み上げるように議論を重ねていくところが安心感があって好きだ。他者との会話が全てこうだといいのにと思う。

ちなみに、「経営中毒」書籍版も購読したが、話題が流動的となるPodcastでは難しい、「知見のアーカイブ化」がなされていて、これまでの良いまとめとして機能していた。ボーナストラックも付いていて、なんかファンブック的な要素もあり良かった。

これに関してはあんまり途中から聴くような感じじゃないので、一話から是非!

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■東京ビジネスハブ

何をしていても新しい刺激を、早く新しい刺激をと脳が求め続けるものだから、ほのぼのした二人のゆるい会話、みたいなものが耐えられず、聞くコンテンツに迷走していた。そんな中で俺が行き着いたのが、ナレッジ系だった。特に、経済・企業といったコンテンツが面白く、聴きあさるようになった。なんで?と自分でも思うがそうなってしまったのです。実際面白いので。

「東京ビジネスハブ」も、前述のChronicleが手がける番組。こちらではよりマクロに、経済動向やテクノロジー、カルチャーなどを取り上げて、様々な分野の専門家をゲストにパーソナリティの野村さん(声が良い)が新たな知見を届けてくれる。

どのゲストも自分の得意な領域があり面白いが、俺は特にリサーチャーのcomugiさんの回がお気に入りである。以下オススメ回です。

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■BUSINESS WARS/ビジネスウォーズ

Wonderyがお届けする企業間の争いを描いたオーディオドラマ。

誰でも知っているような大企業二社を取り上げ、その黎明期から、大きく成長する上で必ず出会う強烈なライバル。競合他社を意識しながら事業を展開する中で、まさに戦争と言えるような闘争や、人間ドラマが生まれる様が熱い。ドラマ仕立てではあるものの、実話を元にしていて、自分達の生活に深く根付いている企業のことについての話なので、身近に捉えることができる点がオススメだ。

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特に、任天堂ソニーはずっと熱くて最高。このPodcastを通じてバーガーキングや、パタゴニアがもっと好きになった。

新しいエピソードをずっと楽しみにしているのだが、更新がしばらく止まっている。取材や調査で制作が大変だとは思うのだが、陰ながら応援している。「案内役の春風亭一之輔です。」をまた聴きたい。

 

***

耳の時代の到来を少しながら感じてくれたかと思う。特にPodcastは自分の中で新たな発見だったので、これからもっと色々なコンテンツを聴きたい。みんなで洗い物や掃除をしながら、退屈な脳を刺激していこう。

もし、同じのを聴いている方がいたらぜひ感想を共有したい!

また、「こんなのを聴いているよ」等がありましたらどんどん教えてほしいです。よろしくお願いします。以上です。

 

ともに祝おう。耳の時代の訪れを。

 

 

Audibleを使ってみて

最近、Audlbleを使っている。

Amazonが提供しているオーディオブックのサービスである。

娘が産まれ、育休期間に入ってから、図書館をハックすることにハマってしまい読書ペースが爆増した。これまでもゆるく小説などを読んでいたが、今では多少アスリートじみていて、可処分時間の半分近くを注ぎ込む量となってしまっている。継続的に本が読みたいと以前から思っていたので、育休が終わった今でも習慣化できていることは、とても嬉しく思う。そして、インプットが増えると、アウトプットしたい気持ちも湧くものだ。

 Audibleをはじめたことで幾つかの発見があったので、紹介してみたいと思う。個人的にはかなりオススメのサービスなので、この機会にやってみてくれたら嬉しい。

 

■良かった点

 1.「聴く読書」体験

 俺は紙の本原理主義なところがあって、電子で読むより紙で読んだほうが情報が入ってくると思い込んでいる節がある。なので、Audibleを始める前は、「耳で聞いて、今までと同じような読書体験が得られるか?」という懸念があった。だが、実際に始めてみると、驚くほどにスムーズに物語の情景が浮かんでくる。最初は慣れも必要だし、そもそもある程度読書経験がないとピンとこないところもあるかと思うが、イメージのしやすさは、紙での読書とほとんど遜色がない。遜色がないどころかむしろ、肉声により物語に生き生きとしたドラマが付与されたようにも感じられる。これは子どもの頃に経験した、「読み聞かせ」の体験と同じなのだ、と気づいた。

 

 

 これとかは完全に脳内で映画化されていた。

 

 2.聞き逃しても大丈夫

 紙の本なら、物語の途中でも電子より早く気に入ったページや、思い出したいページに戻ることができるが、オーディオブックでは戻ることが少々煩雑になる。紙本原理主義者としてはそういう瑣末な心配事があったのだが、実際に瑣末なことだった。大筋が理解できていれば、多少の聞き逃しは許容できた。俺たちはそもそも紙の本でも一字一句しっかり読んでるわけではない。なんとなくの感じでパラパラと読み飛ばしても大筋は掴めているように、多少聞き逃したところで、物語の体験にさしたる問題はなかったのだった。そして、本当に大事な言葉なら、小説内で何度も出てくる。もちろん、大事だと思ったところは30秒ごとに早戻しすることが可能なので、聞き逃したら戻せばいい。しかし、最近はあまりそれもしなくなった。

 

 3.バリアフリーな読書

 書籍を手に持ち、ページを捲る。そんな読書の姿勢を維持できることは、自分にとってこれまで当たり前のことだった。『ハンチバック』を読んでから、「読書バリアフリー」という概念を知ったが、オーディオブックはその解決策の一つだ。オーディオブックなら、本を開かなくていい。耳と、処理する脳があればいい。他の誰かが勝手にページを進めてくれる、というのはとても楽だと知った。手も目も疲れることがない。特に、紙の本だと時間がかかるような知的読みものに手をつける際には、ナレーターが読み進めてくれるのはとても助かる。

 

 4.ナレーターの声によるバフ

 たまにだが、ナレーターの声が小説世界の雰囲気に完璧にマッチしている作品があり、そういう時は没入感も上がる。『虐殺器官』を再読(聴?)した時は声がカッコ良すぎてそっちにテンションがあがってしまった。ナレーターの方もキャラクターごとに声色を変えてくれていて、聞き分けしやすい作品が多いように思う。ちなみにだが、試しに『ハーモニー』の方も聞いてみたが、小説内の演出として使われるHTMLタグの部分もしっかり音読してくれていて笑ってしまった。こちらは全く向いてないなと思った。

 

■悪いというほどではないが…

 1.作品がまだまだ少ない

 小説は各ジャンルごとに、新旧問わず幾つかは揃っているなと感じるが、特に「ビジネス・キャリア」のカテゴリはもう少し充実して欲しいと思う。

 

 

 

この辺のタイトルは網羅されていてどれも面白いが、俺はすでに紙の本で読了済みだったので、他にも興味深いものが見つかればいいなと思う。ラノベと、芸能人などの有名人にまつわる書籍、ポッドキャストなども割とあるが、俺はほぼ読まない。あと村上春樹がやたらと充実している。

 

 2.読み切るまでに時間がかかる

 小説では特に、勢いづくとその日のうちに読み切ってしまうこともあると思うが、オーディオブックではそういったことは難しい。いつも定速での進行となってしまうためである。2倍・3倍速で再生することができるため、初めに予想していた程、読了までの時間はかからないが、もどかしさはある。最近はこのペースにも慣れてきたので、ゆっくり楽しむか、と「聴く読書」モードに切り替えているが、ハマった作品に出会うと「これ紙で読んでたら一瞬だっただろうな」と過ぎた時間を思わないでもない。

 

 3.ナレーターの声によるデバフ

 長い長い朗読をほとんど一人でこなしている語り手の方には申し訳ないのだが、本当に時々だが、あんまり合ってないなと思う作品もある。

 この作品、内容は熱い医療ドラマで面白かったのだが、ナレーターの声が少しくぐもっていたのが玉に瑕だった。後でレビューをのぞいてみると、作品の感想ではなく、ナレーターの声についての賛否のみがなされていて、声優の技量によって読書体験そのものが左右されるため、仕方ない面はあるが、オーディオブックならではの価値基準だなと感じたのと同時に、「小説の良し悪しをナレーターの声で決めるの違うんじゃないか」と、俺の中の原理主義者が小言を言っていた。

 

■終わりに

 ある葛藤がある。オーディオブックを聞く時間と、音楽を聴く時間が、完全に被ってしまっている。俺はそれなりに音楽も好きで、新譜を漁りたい気持ちも湧いているのだが、Audibleを起動してしまうと、Spotifyが聞けない。逆に、音楽を聴く時は、小説を読み進められないというジレンマを抱えるようになった。しかし、二つを同時に行うことはできない。1日は24時間しかないし、一人の時間はもっと短い。どちらかを選ばなくてはならない。Audibleはお得、というほど安いサービスでもないため、たくさん読もうと貪るように聴く読書に取り組んでいるうちに、そもそもサブスクサービスに対しての姿勢とはこうあるべきなんじゃないかと思い始めてきた。漫然と登録していていいサブスクなどないのではないか。

 現代では、魑魅魍魎のように寄ってたかって自分の可処分時間を可能な限り奪おうと、あらゆるサービスが存在している。主体性を明け渡して、なんとなくの興味であれこれと手を出しても、利用できる自分の時間は限られている。そんなわけで最近は、何かをして過ごす時間は、他の何かを犠牲にしているのだという意識を強く持つようになった。

 

 

 

 

Sigur Rosという神のライブにいった

シガーロス、それは神の名前だ。

簡単に「神」とか言ってしまうこんな世の中で、僕が唯一そう呼ぶバンド。

Sigur Rosアイスランドのバンドで、僕にとって特別なんだ。

 

シガーロスの説明をしたいんだけど、その音楽は筆舌に尽くしがたい。例えようがない。静かだけど轟音で、単純だけど複雑な構成に、いつまでも続くような残響…。ダメだ、どうも的を射ているとは思えない。

とにかくもうほんとグオオオオオヴオオオオオオオオオムオオオオオオオオンン…オオオオオオオオオオオオオオオンンンンン......(余韻)って感じです。語彙力が高くて助かった。

 

普通のバンドだったら、新曲とか作るけど、シガーロスの場合は創造する(つくる)だからね。その歌は讃来歌(オラトリオ)で、後罪(クライム)の触媒(カタリスト)なんですよ。意味不明。そのくらい神格化しているから、僕にとっての歴史はもうシガーロス以前、以後に分かれている、B.C?否、B.S(ビフォー・シガーロス)なのである。

 

人間生きていると断ち切りたい面倒な柵の1つや2つはある。訳の分からない人間たちに訳の分からない言語で罵られることもある。そんな時、こいつはどうせシガーロスなんてわからない人間なんだと思う。これは完全に偏見なんですが、自分とそりの合わない人間は確実にシガーロスの名前すら聞いたことない。

 

かと言って「シガーロス?いいよね~私も好き〜」みたいなことも言われたくないんですよ。俺は。「俺のシガーロスはあくまで俺の主観で見るシガーロスであって君の観点から見るそれではないしそれに…」

 

僕はシガーロスの話になると死ぬほどめんどくさい人間になる。好きすぎて距離感がキモくなる現象だ。

 

そんな僕の神であるシガーロスのライブを、昨日見ました。これはもう来日なんて生易しいもんじゃない、降臨だ。いや来迎だ。そんなわけで来日公演に行ってきた。大阪はZepp難波で行われたそれは、まさに神との邂逅であった。

 

ここからは、僕の堪能な語彙力で表現したいと思う。

 

会場の照明が落ちて、ゆっくりとスモークの煙が流れる。

暗くなったステージの奥から、ヨンシー、ゲオルグ、オーリーの三神が現れる。

僕は前から三列目、全員の顔がよく見える。

 

 神「…オオオオオオオオン…ウオオオオオン」

(ヤバイ、本物のSigur Rosだ…意外と老けてるんだな)

 

神「ヒョイイイイピイイ ウーー エンスイキローーーン」

(Ekki mukkから、うおおヤバイ!)

 

神「ズーーーン ズーーーン

グオオオオオオオオオオオウオオオオアアアアアアアアアンンンンン(ドウンドウン)

トゥシャーニーホーーーーーーー」

(グロウソウリ!!!!これ三人の音????????マジですごくない???????)

 

ここらへんで鳥肌が無限個たった

 

神「ズオオオオオオオオ…アオオオオオオアウウウウウオオオオンン

ズィイイイイイイイイイイイ-------ズオオオオアアアアアアン

グレアーーーーーー」

(「()」の曲はヤバイ!!!死んでしまう!!ギターにやられる!!)

 

神「ポン ポン ペン ポンペペンポンポン

アーーーウーーーーウーーーーー ウーーーーウーー」

(Fljótavík、Varða…美しさ)

 

…オウウウン…ゴウウウン…(余韻)

 

一部終了、今回は二部構成になっているらしく、一旦休憩があった。

そして、ステージの奥まったところから再び現れる神々。

 

神「ドンドドン ドンドン」

(照明、VJもものすごいなこれ)

 

神「ギリギリ ギリギリ…」

(まさか…これは…)

神「ペンペペンペンペンペンペペン(テンテテンテンテン)」

ワァ-------

(Sæglópur!!!!!!!!!!!!!ああrgじゃgjっkdj!!!!!!?????)

 

ここで会場のボルテージは最高潮となり、

 

神「ドンドンパ ドン ビーー ドンドンパ ドン ビーー ドンドンパ ドン ビーー

ゴオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アフチュールミーーーー」

(ぬいバッテリーーーーーーー!!!!!!!dふぁgdg)

 

神「ポン ポン テレン テンテン

ユーーーサレローーーーーソーーユソーーー」

(Vaka!!!!!!!!!!fjhjfhがじ)

 

神「ドンドンドンドンドンドン   ドンドンドンドンドンドンドン ドンドンドンドンドンドンドン ベ------ベ---ベ---ベ----」

(フェスティバルっ!!!!!!!この曲のカタルシス!!!!!ドラムがいつの間にか半裸に!!!!!)

 

神「ブーーーンブーーンン オアアアアアン」

(ああ…さっきヨンシーがちょっとこっちきたん良かったな…)

 

神「ゴアアアアアアン ヴアアアアア ズィオウアウアウアウ 

シャアアーーーーーーーキーーーーローーン 

ズンズン…ズン…」

 

ヌアアアアアアアアキイイイイイアアアンンン……ウイイイイイアアアアアン………(余韻)

 (あああ………)

 

 

 

 

終わった。

 

正直、Sæglópur Ný Batterí Vaka Festival の流れはやばすぎて今思い出しても鳥肌が立つ。でもまだ見たかった曲いっぱいあるし、もっとやって欲しかった。巨大な自然そのものみたいなSigur Rosのライブは、森の静けさから、風の音、雷鳴や嵐みたいな轟音まで、会場いっぱいに暴れまわっていた。そして、その余韻といったらないよ。ほんとに圧倒された。またいつか必ず見たい。最高だったーーー

 

 

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 Takk...

Spotifyで聞くブラックメタル入門

聞き慣れた曲ばかり毎日聞いていると、何となく焦ってくる。同じような刺激を受けていくうちに、知らず知らず感性が摩耗していくんじゃないか、そんな不安にとらわれる。

 

Spotifyを始めた。音楽ストリーミング配信サービスである。

www.spotify.com

僕はSpotifyが日本に上陸する前からちょくちょく使っていたんだけど、普段はiPodで音楽を聞いていたので、課金したのはついこないだのことだ。見慣れたアーティストばかりが並ぶ自分のiPodとは違って、Spotifyにはいろんなのがある。これ前から聞きたかったやつ、とか、この曲ライブ盤あったのか、とかたくさん見つかる。自分のように様々なジャンルを横断的に聞いていくタイプには相性が良いようだ。

 

イマドキのアーティストにもついていきたかったので、岡崎体育やら、サチモスやら、水曜日のカンパネラやらをフォローして聞いていたけど、結局すぐに飽きた。こういう音楽を聞いても表面をなぞるだけですぐ消費してしまうのは、自分がメインターゲットから外れたからなんだと気づくと、少し寂しさもある。

 

なので今は、ブラックメタルを聞いている。

 

長い前置きが終わり、今日はブラックメタルの話をする。それはとても癖の強い音楽です。

悪魔主義」と言われる反社会的な音楽性が特徴のブラックメタルは、ノルウェースウェーデンなどの北欧で生まれた。北欧といえば家具や雑貨などで、洗練されてスマートなイメージがあるけど、実はあのあたりは冬の日照時間が極端に短いので、精神を病んでしまう人が多い。日光からセロトニンを作ることができないのである。そんな死ぬほどの陰鬱を昇華してできた音楽なので、当然のごとくブラックメタルは地獄で録音したような曲ばかりだ。

 

速すぎるシンプルなドラム、存在感の薄いベース、単音のトレモロリフが永遠に続くギター 、終わっているデスボイス。乱暴に言っているがブラックメタルの大体はこんな感じだ。ありえないほどの低音質なバンドが多いので、基本的に何やってるのかがわからない。何やってるのかわからないがとにかく速い。速いしウルサイ。たまに宗教音楽みたいなコーラスやシンセが入る。その後はまたさっきの速いやつだ。

 

それだけ聞くとただの騒音みたいに思われるかもしれないが、ブラックメタルの面白さは、その哲学にある。死者を模したようなコープス・ペイント、血のりや動物の死骸を使ったライブパフォーマンス、折りに触れ自殺するバンドメンバー。バンドによりけりだが、とにかく全てに反抗する、と言った哲学は共通している。

 

反社会性は音楽だけに留まらず、本物の犯罪者も多く発生した。教会を燃やしてジャケットに使用したり、絡んできたゲイを殺害したり、最終的には内ゲバでバンドマン同士で殺人事件が起きた。ブラックメタルはわりと危険である。

 

だけど、そんな奇抜なファッションも、やりすぎなパフォーマンスも、騒音に近い音楽性も、何もかも鬱から抜け出すためだと思うと少し可笑しくなってしまう。どのバンドも、欝や恐怖を昇華するために真剣にやっているので、行き過ぎたシリアスがギャグに見えるのと同じように、ときどきどこか滑稽に見える。その純粋さもまた、ブラックメタルに惹かれる点である。

 

僕は暗い気分の時は、ブラックメタルを聞く。単調なリズムで低音質な爆音が流れ続けると、ホワイトノイズを聞いている感覚になって、いつの間にかささくれだった気持ちが少しニュートラルになる。自分と同じように、それ以上に陰鬱な気持ちで作られた音楽に共感することが癒やしになるのである。

 

SpotifyFacebookと連携して、利用している友達が聞いている音楽を見ることができる。チェックしてみると、僕のFacebookは友人が少なすぎたのか誰もまともにやっていなかった。3ヶ月で100円セールはもう終わってしまったが、今からでもどうですか。一緒にブラックメタルを聞こう。SNSの鍵アカで上司や会社の愚痴をよくこぼしている諸兄らには、特にオススメしたい。 僕はFuneral Mist、Deathspell Omega、Xasthurがお気に入りだ(バンド名もちょっと笑えるでしょ?)。